癌の増殖を抑える「薬物治療」とは
■ガン細胞の増殖と腫瘍の増大を抑える
薬物療法に用いられる薬剤は、癌の種類、ステージなどによって異なります。主な抗がん剤として、ガン細胞のDNAを破壊する「アルキル化剤」、ガン細胞の増殖を抑制する「代謝拮抗剤」、ガン細胞膜を破壊し癌のDNAの合成を抑える「抗生物質」などがあります。
■主な副作用
アレルギー反応/骨髄抑制/吐き気・嘔吐/下痢/便秘/口内炎/貧血/出血傾向/疲労感・だるさ/脱毛/手足のしびれ感など
■主な抗がん剤
分類 | 特徴 | 主な製剤名 |
アルキル化剤 | ガン細胞のDNA・RNAたんぱく質の合成を阻害する | シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ブスルファンなど |
代謝拮抗剤 | ガン細胞の核酸と似た化学構造で、かつ反対の作用を持つ物質。ガン細胞の発育を抑制する | ゲムシタビン、TS-1、フルオロウラシル、トリフルリジン・チピラシル、メトトレキサート、カペシタビン、テガフールなど |
植物由来 | ガン細胞が分裂する際に形成される物質に傷をつけ、分裂できないようにする | イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、エトポシド、ピンクリスチンなど |
抗生物質 | ガン細胞のDNA複製を妨げたり、細胞膜を破壊したりするガン専用の抗生物質 | ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、アムルビシンなど |
免疫賦活剤 | ガン細胞に対して直接攻撃するとともに、免疫機能を高める | インターフェロン、インターロイキン2、ウベニメクス、クレスチンなど |
出典:最新版「がん」の医学百科
■分子標的薬
●ガン細胞だけを狙って攻撃する
分子標的薬は、ガン細胞に特異的に多くなっている遺伝子やたんぱく質をターゲットにする薬剤です。主な薬剤に「抗体製剤」「シグナル伝達阻害剤」「血管新生阻害剤」などがあります。
主な副作用:発熱/吐き気/寒気/だるさ/皮膚の発疹など
■ホルモン療法
●ホルモン由来の癌の増殖を防ぐ
ホルモンが癌の要因となっているときに、その作用を抑えるホルモンや薬剤が投与されます。乳がん、子宮体がん、前立腺がんなどホルモンとの関係が深い癌に用いられます。
主な副作用:ほてり/むくみ/体重の増加/関節痛/骨粗しょう症など
■副作用対策を万全にして薬物治療に臨む
薬物療法には、錠剤やカプセルなどの飲み薬の服用と、点滴や注射などで静脈に薬物を注入する方法があります。静脈へ薬剤を直接注入する場合、
① 腕の血管など細い静脈に点滴の管を介して注入する方法
② 太い静脈である中心静脈まで挿入されたカテーテルを介して入れる方法
③ 中心静脈に「ポート」という装置を埋め込み、必要なときに体外から薬剤を注入する方法
があります。癌の種類によっては、特定の臓器に流れる動脈にカテーテルを置く「動注」という方法が行われることもあります。
薬物療法で治癒する可能性があるのは、急性白血病、悪性リンパ腫、精巣腫瘍などの少数です。基本的には、癌の進行を抑え、遅らせる治療と考えると良いでしょう。
薬物療法(化学療法)は「抗がん剤」「分子標的薬」「ホルモン剤」の3つに大別されます。特に抗がん剤は副作用が強いというイメージが強いかも知れませんが、薬剤も目まぐるしい勢いで進歩しており、副作用が少ない薬剤も増えています。抗がん剤の治療と並行して、副作用を軽減する対策も取られるので、やみくもに不安がる必要はないと思います。
近年、癌の治癒率が高まっているのは、早期発見によるところが一番大きな要因ですが、薬物療法の治療効果によるところもそれなりに大きいとも言われています。
参考著書:がんのことが分かる本