末期ガン治療のチーム医療を理解する
末期癌治療はチーム医療
■治療法の決定を補佐する医療専門家
医療専門家が各分野のデータを医師と共有
治療に携わるメディカルスタッフの中には、次のような聞きなじみのない名前の専門家がたくさんいます。それらの医療従事者を含めた「チーム医療」で、ガン患者一人ひとりに対する治療は行われていきます。また、手術にも多くのスタッフが動員されます。
●臨床検査技師
手術前に血液や尿、便などから細菌やウイルスを調べ、病気の原因を探す。脳波検査や心電図検査、心音図検査など体の内部からのデータをとる生理学的検査を行う。
●細胞検査士
ガン細胞をいち早く探し、ガンの早期発見、早期診断を目的にしている専門家。細胞診の写真を患者に見せながら説明することもある。
●診療放射線技師
検査や治療でX線やその他の高エネルギー放射線(CT、MRI検査など)を照射するスペシャリスト。治療面での活躍も大きい。
●認定遺伝カウンセラー
手術前に患者の遺伝子を調べて、病気の原因を詳細に研究。医師とスタッフはそれを元に治療法を確定していく。
手術に立ち会う主な専門スタッフ
●外科医
手術の執刀医。このほかに、補助する外科医が2~3人いることもある。
●麻酔科医
麻酔の導入、手術中の患者の体調変化を管理しチェックする。
●器械出し看護師
手術に必要な器械や道具を外科医に渡したり、準備をする。
●外回り看護師
手術に必要な物品の準備、麻酔科医の補助、手術のサポーター。
●臨床工学技士
手術で使用する麻酔器やX線装置などの保守点検を行う。
●器械保守業者
手術に使用する器械の保守点検や、使い方の助言をする。
実際に治療が始まったら、診察や治療で接する窓口は主に主治医(担当医)になりますが、治療にあたる医療従事者たちにはそれぞれに専門分野があります。
たとえば、医師といっても、実際に手術を行う外科医、手術の際に麻酔を扱う麻酔科医、病変部などの組織を調べる病理医などのほか、抗がん剤などの薬物療法を担当する腫瘍内科医、放射線療法を行う放射線科医などもいます。
また、看護師の場合にも、入院中に対応してくれる病棟看護師や、手術の際に医師の手伝いをする手術室看護師など、さまざまな役割分担があります。
複雑で高度な医療が求められるガンの治療では、特に専門性を持った医療従事者たちの連携による「チーム医療」が欠かせません。患者はその中心にいて、チーム医療の一員であるとも言えます。
つまり、ガンはひとりで闘うものではなく、チーム戦と言えます。
■スペシャリストがガンを治すために一丸となる
がん患者一人ひとりを各分野のメディカルスタッフがサポート
●主治医
診察や検査結果により、治療方針を決定。
●病理医
病理診断を行う緑の下の力持ち。細胞などから病気を精緻に診断する。
●腫瘍内科医(化学療法医)
ガン薬物療法の専門家。
●放射線診断医・治療医/診療放射線技師
放射線を使った画像の診断、治療を行う。技師は、実際に放射線を扱う。
●歯科医
ガン患者の口腔ケアを行う。
●看護師
専門看護師や認定看護師はガン専門の看護のスペシャリスト。
●薬剤師
ガン専門薬剤師はより専門性が高く、ガン専門薬剤師認定を取得している必要がある。ガンの投薬治療時の薬剤指導を行う。
●理学療法士
術後の運動機能の回復をサポートしてくれる。体操、マッサージ、電気治療などで運動能力を回復させる。
●臨床検査技師
血液、尿、便などの検体検査を行う専門家。
●ソーシャルワーカー
治療費の支払い、仕事、家族関係などの相談役。
●管理栄養士
病状に合わせて栄養が摂れるようにサポート。
●精神科医
心の病気を診断しながら治療を行う。心のケアはとても重要!
※病院によって異なる場合もあります。
病院によってチーム医療に参加するメディカルスタッフのメンバーは異なります。大切なのは患者の病状をより良くするためのチーム作りです。
医師と看護師だけでなく、それ以外にもさまざまな職種のスペシャリストが携わっています。
各種検査を行う臨床検査技師、医師の処方箋に基づいて薬の管理を行う薬剤師、入院中の食事づくりを担当する管理栄養士、そして手術後のリハビリに対応する理学療法士や作業療法士たち、各医療従事者(コ・メディカル)が、それぞれの立場で治療の一環を担っています。
さらに、状況に応じて口腔ケアが必要な場合には歯科医、心のケアには精神科医、そして治療費の支払いや生活サポートではソーシャルワーカー(医療ソーシャルワーカー)が患者を支えてくれます。
先に患者もチームの一員だと述べましたが、治療において疑問や質問があればその都度確認して、うまくいかない場合には無理せずありのままを伝えて相談することが、チーム医療の成功のカギだといえます。
また、治療や診察はずっと同じ病院で行うとは限りません。初期治療を行う医療機関とは別に、術後のフォローや経過観察には患者の自宅から近いクリニックや診療所で受ける場合もあり、医療機関同士の情報共有もチーム医療のひとつだといえます。