完治のために末期がん治療を知る~タイトル
完治のために末期がん治療を知る~タイトル

ガンはどうやって私たちの体ででき、大きくなるのか

 
末期癌克服への架け橋区切り線
  
末期がん克服への懸け橋イメージ

末期癌克服への懸け橋

 

ここでは、末期ガンと闘う上で私が知っておくべきだと父の闘病中に感じたことを、ガン専門医の説明で分かり易く記しておきます。ガンのメカニズムについての正しい知識を身につければ、主治医の説明も理解できるようになりますし、余計な不安も取り除けますし、さらにはガン治療をどう進めるべきかも分かるようになりますから。
 
 

 
それでは一体、ガンの正体とは何なのでしょうか。早期がん、進行がん、末期がんなどという言葉をよく耳にされると思いますが、それらの違いのほとんどは大きさです。また、胃がん、大腸がん、脳腫瘍……。ガンは体のほとんどの部分にできます。これはどうしてでしょうか。
 
ガンは一言でいえば、「体内の一つの細胞がその細胞の中の遺伝子に傷が入って分裂、増殖が異常に起こり大きくなった細胞のかたまり(腫瘍)」です。
 
これでは何のことかピンとこない方も多いと思いますし、「ガンは遺伝子の傷が原因ですが、ガンになった人の子供ががんになるとは限らない」ということも納得できないと思います。ここでは深入りして説明します。それは、ある程度ガンのメカニズムを知っておいた方が医師の説明がよくわかり、治療法も選択しやすくなることは言うまでもないからです。まずは、人間の体を生命の最小単位である細胞レベルで見ていきましょう。
 
 

 
私たち生命体はみんな一つ一つの細胞が集まって、お互いにいろいろな働きかけをしながら機能しています。ここで生命体と書いたのは、全ての生命体(人間はもちろん、ネコもネズミもプランクトンも果ては大腸菌や乳酸菌までも)が細胞を単位としているからです。
 
細胞が一つだけで生存していく生物もいて、そういう生物を単細胞生物といいます(大腸菌や乳酸菌などはそのよい例です)。我々人間を含め、哺乳類は他の生物と比べてみても大変多くの機能がありますから当然、体を作っている細胞の数も多いのです。人間の体はおよそ60兆の細胞で構成されています。一つの細胞だけで生きてゆく生物もいるのに60兆も細胞があれば、非常にいろいろな機能をもつことができます。食べ物を分解して効率よく体の役に立てる消化機能、体を感染や異物から守る防衛機能、人間で著しく発達した言語能力や思考能力など、これらは全て生命が地球上に誕生してから何十億年もかけて進化した結果といえるのかもしれません。
 
 

 
60兆というと大変な数で、想像もできません。世界の人口が70億とも80億ともいわれているので、世界人口の一万倍近くの数の細胞が我々一人の体の中にあることになります。しかしそれだけ多くの細胞も元は受精卵という一つの細胞でした。受精卵というのは精子と卵子の融合体です。精子にある父親の全遺伝子と卵子にある母親の全遺伝子が合わさって新しい生命の元である受精卵ができます。
 
受精卵は母親の子宮の中でどんどん分裂し、人らしい形を形成し、人らしい機能を獲得していくのです。
 
 

 
しかし細胞が分裂していくとしても、むやみやたらに分裂したのでは私たちの体の形はおかしくなってしまいます。脳の細胞になるところが皮膚の細胞に置き換わってしまえば、考えることも生命を維持することもできません。私たちが様々な機能をもち、形態を保ち、細菌やウイルスなどの侵入から体を守っていられるのは、細胞たちがいろんな情報をお互いに出し、受け取っているからなのです。
 
ホルモンという言葉を耳にされたこともあると思いますが、ホルモンはホルモンを産生する細胞が体のあちこちの細胞に命令を出すときに用いる物質なのです。
 
その他、細胞は近くの細胞などにもいろいろな物質を用いてコミュニケーションをとっています。例を挙げると、体の中に有害なものがあるという情報が体を守る免疫細胞群に伝わると、免疫細胞たちは態勢を整え攻撃するのです。

 

 
勘のよい方はそろそろ、「つまり細胞たちはお互いに調節しあっているんだな。ということは、ガン細胞は調節の効かなくなった細胞が周りの細胞の働きかけを無視して、でしゃばって増えていく状態なのか」とひらめかれるかもしれません。その通りなのですが、遺伝子の話にいくまでもう少し説明させていただきます。
 
少しややこしくなるかもしれませんが、ガンは遺伝しないということをはっきり知りたい方、ガンの原因を詳しく知りたい方はしばらく我慢して読んでいただければ幸いです。
 
皆さんはテレビや新聞などで「DNAの配列が解明されました」とか「遺伝子の数が全てで約三万だということがわかりました」などというテーマの特集がたくさん組まれているのを見たことがあるかもしれません。
 
かといって「DNAと遺伝子の関係は?」「遺伝と遺伝子の関係は?」ということについて、はっきりとはわかっておられない方が多いのではないでしょうか。ガンと診断された方で、「ガンは遺伝子の病気だからうちの子供にもガンが多いかも……」と悲嘆に暮れる方がよくおられます。医師には遺伝と遺伝子とDNAの違いが常識としてあるので、「何を悩んでおられるのかわからない」と説明をあまりしない方もおられるようです。
 
 

細胞の働き説明
 
遺伝子の働き

 
少し複雑になりますが、皆さんが正しい治療の選択、そして人生の選択ができるようにサポートするのがこのサイトの目的ですから、図を多用するなどして説明していきたいと思います。まず、一つの細胞の図(上図)を出しておきます。細胞が周りの細胞と情報を交換しながら生きていると今まで書いてきましたが、それは詳しくは細胞の中にある遺伝子に情報が伝わり、遺伝子がそれにふさわしい対応をしているということなのです。
 
 

 
遺伝子というのは「細胞の形、働きを制御しているもの」の総称と定義することができます。細胞はたくさん集まって、私たちの体の各部分を構成したり食べ物を消化する酵素を作ったりするなど、非常にたくさんの機能を担っていますが、これらは全て必要な場所で必要な遺伝子が働いているからなのです。例えば、肝臓の細胞では肝臓の形を整える遺伝子や胆汁をつくる遺伝子、そしていろいろな有害物質を解毒する遺伝子などが働いています。
 
遺伝子は、人の場合約3万個あると考えられています。1つの細胞の中には、人間の機能に必要な情報が全て書き込まれた遺伝子が一組入っています。この1組分の遺伝子のセットをゲノムといいます。
 
どの細胞にも1セットの遺伝子の総体が入っているのです。皮膚の細胞でも、脳細胞でもです。皮膚の細胞では脳の特有の機能に必要な遺伝子は使われていませんが、細胞の中には入っています。細胞の種類は約200種類に分けることができますが、我々の体の各部分では必要な遺伝子のみが使われているのです。
 
 

 

DNAの構成
 
細胞の制御は遺伝子がしている
 

 
ではDNAとは一体なんでしょうか。DNAというのは遺伝子を記している暗号のようなものです。DNAは四種類の塩基(A、T、G、Cと呼ばれる物質)からなり、例えばAATCGCTTGCA……と並ぶことによって何かの遺伝子を記しています。一つの細胞の遺伝子を記しているDNAは、53億あるといわれています。四種類の暗号が53億も並んでいるのですから、莫大な情報量です。その情報量自体も驚きですが、それだけ多くの情報があの小さな細胞(直径約2マイクロメートル)の中に入っているというのも驚きです。また我々人間は、この全DNAの99.9パーセント以上が皆同じですが、0.1パーセントは一人一人で異なります。これが私たちの顔や身長を始めとする様々な部分が異なる所以なのです(一卵性双生児は全く同じDNAを持っているので何から何までそっくりです)。
 
 

 

ですから遺伝子に異常が起こると細胞も異常にふるまいます

 
細胞のふるまいを制御しているのが遺伝子です。ですから、遺伝子に異常なことが起こると、当然周りの細胞からの働きかけに対してきちんと応答できませんし、周りの細胞への働きかけもうまくいきません。現代ではほとんどの細胞の病気は、この遺伝子のレベルで説明されるようになってきました。
 
ガンは「一つの細胞がどんどん分裂し増殖していったもの」と書きましたが、これは遺伝子のレベルで説明してみると「一つの細胞の遺伝子が外からの何らかの原因で(後でご説明します)傷つけられて異常に分裂、増殖して歯止めがかからなくなったもの」と説明することができます。
 

 
細胞が分裂するということは、細胞にとっては非常に大仕事です。自分と同じ機能をもっているものを作り出すのですから、細胞としても慎重に行わなくてはなりません。もしも何か遺伝子を傷つけてしまうようなことがあれば、それこそ一大事です。また、分裂を必要とするとき以外に分裂しても、周りの細胞が迷惑なだけです。
 
ですから細胞分裂には非常にたくさんの調節や制御を行う遺伝子があり、それらは細胞の異常な増殖を防ぐという意味で「ガン抑制遺伝子」と言われています。
 
しかし遺伝子に一つ傷が入った細胞のうち、増え始めて細胞が分裂していくうちに、さらにガン抑制遺伝子の壊れた細胞が出てくることがあります。そして傷の入った遺伝子が一つ、二つと増えていくにつれ、どんどん分裂の速度が速くなったり、無秩序な増殖になったりして「悪性化」への道をたどっていくのです。
 

細胞分裂とがん

 
 

 
遺伝子が傷つくとはどういうことでしょうか。それは遺伝子を記しているDNAの暗号が少しおかしくなるということです。つまり、一文字抜けたり入ったり、もしくは違う文字に変わってしまったりするミスを細胞がおかすのです。
 
こんな変化(変異と言います)の原因は様々なものが考えられますが、ガンの元になる変化の原因もいろいろなものが考えられます。化学物質や放射線などがよい例です。時にはウイルスがガン細胞の最初の変化の原因になっていることも挙げられます。
 

様々な原因でガン化する

 
 

 
ほとんどの変異は細胞の中で修復されますし、修復できないときでもその細胞が異常にふるまうようになると、体の防衛機構である免疫細胞が害を及ぼさないように処分してしまうのです。
 
細胞の遺伝子には実際にはかなりの頻度で傷が入り、分裂、増殖が際限なく続いていくガン細胞への変化もしばしば起こっています。しかし、ほとんどの悪い変化は、
 

  1. 細胞内で修復される
  2. 免疫細胞がガン細胞を見つけて処分してしまう

 
というような細胞の「対ガン」の機構によって、ガン細胞化するのが防がれているのです。
 
ガンは一つの細胞の異常から始まると最初に書きましたが、私たちの体では成人で一日に約5000個のガンの芽が生まれ、約40個のガン細胞が生まれています。しかしこれらは体の防衛機構によって成長できないようになっていると言われています。

 
 

 
ガン細胞が体の様々な防衛機構をくぐり抜けて体の中で増え始めてしまったとしても、発見されるまでに増えるにはとても長い時間がかかります。例として乳がんを挙げてみようと思います。乳がんも一つの細胞がガン化して増えていくのですが、X線検査で発見されるまでには約1億個の細胞に、触診できるようになるまでには約10億個の細胞になっていなくてはなりません。分裂、増加していくときも少しは体の防衛機構に抑えられることを考えると、かなりの時間がかかります。
 

がん発生・増殖の原因
 
 
しかしその増え方は、ガン細胞群の周りの防衛機構の強さに大きく左右されます。そしてその強さを決めるのが私たちの生活習慣なのです。例をあげるとストレスですが、ストレスの多い人は免疫力が弱いということは周知の事実でしょう。
 
私たちは二十歳代の間に「将来大きくなるガン」の元を一つくらいは体のどこかに持っていると言われています。そしてガンは四十歳を越えるあたりから多くの人たちの体で見つかるくらいまで大きくなります。しかし、一方でガン以外の原因(老衰、ガン以外の病気など)でお亡くなりになった方の体から、まだ小さなほとんど無害なガンがみつかることもあります。これはガン細胞が増殖していく過程に私たちの生活習慣が大きく関与していることの大きな証拠なのではないでしょうか。
 
 

 
そしてガンは元ができると何年も何十年もかけてじわじわと大きくなっていきます。ガンの完治が見込みづらい最大の原因は、「自覚症状が出てきたときはガンがかなり大きくなっている」ということです。自覚症状がないからこそ、先ほど書いたように、ガン以外でお亡くなりになった方から死後に小さなガンがみつかることがよくあるのです。例として乳がんの一般的な増殖のグラフをのせておきます。
 

腫瘍細胞集団の分裂回数

 
ガンも小さなうちは周りの細胞とほとんど性質が変わりません。小さなガンはただその部分が膨れ上がっている良性の腫瘍ですが、大きくなっていくうちに周りの臓器を圧迫し、その臓器のもつ機能を障害します。そして徐々に周りの細胞と違う性質を帯びるようになり、悪性のガンとなっていくのです。そして悪性になったガンは大きくなるうちに血管やリンパ節などに入っていき、体中にガン細胞がまかれることになります。これが転移といって、ガンの治療を困難にさせている最大の原因です。
 
癌が増えて悪性化して浸潤・転移するイメージ

 
 

 
ここまでお読みになられた方は「ガンが遺伝するはずがない」ということにお気づきになられたでしょう。
 
つまり一つの細胞には一組の全遺伝子が入っていますが、細胞は私たちの体に60兆あるわけで、ガンになる細胞はたった一つだからです。つまり、ある一つの細胞がガンになっても、他の細胞はみんな正常なのです。
 
遺伝するというのは、精子にある父親の遺伝情報と卵子にある母親の遺伝情報が混ぜ合わさって子供の遺伝子になり、子供にいろいろな両親の性質が引き継がれるということです。ガンになりやすさというものも少しは遺伝しますが、それは「肺がんになりやすい」とか「胃がんになりやすい」のように部分的なもので、全体にガンになりやすいということはありません。しかし、一部の小児がんでは、両親の持っているガンを抑える働きをもつ遺伝子の一部が機能しなくなったもの同士が混ざり合うこともあります。
 
よく「私の家系にはガンが多いから、私もガンで……」とおっしゃる方がおられます。親から子に伝わるのは「遺伝子に記された生物としての私たち」の情報だけでなく、様々な生活習慣も伝わることを考えると、「ガンを大きくしやすい」生活習慣が伝わっている部分もあるのかもしれません。後で述べますが、私たち一人一人のガンのなりやすさというものは確かにありますが、ガンを大きくする非常に大きな原因は、生まれた後の生活習慣なのです。
 
 

 

  1. 私たちの体は精子と卵子が合体した一つの細胞が60兆もの細胞に分裂をして、それぞれが様々な機能を果たしています。正常な細胞は周りの細胞と協調して働いています。

  2. ガン細胞というのはたった一つの細胞が周りの細胞との協調を失い、異常に増殖していく細胞の事です。一つの細胞から出発するのですから、検査などで発見できるまで大きくなるにはかなりの時間がかかります。だから若年には少なく、年輩の方に多いのです。

  3. ガン細胞は二十歳くらいになると誰の体にもあると言われています。それを大きくするかどうかは皆さん次第です。

  4. 遺伝子とは私たちの細胞一つの中にあるDNAで書かれた暗号で、細胞の司令塔のようなものです。その暗号が細胞分裂のときなどにおかしくなってしまうことがあり、無限に増殖していくようになると、ガン細胞化します。暗号に傷が入れば入るほどガン細胞は悪性化していきます。

  5. ほとんどの病気が遺伝子に何らかの傷が入る(DNAの暗号が変わる)ことで説明されるようになりました。ガンも増殖に関わる遺伝子の病気です。しかし、親がガンだったからといって子供がガンになることは決してありません。ガンのなりやすさが少し遺伝するだけです。

  6. ガンのなりやすさは遺伝しますが、それは、小児がんの場合を除き、ほとんどが部分的なものです。成人のガンの場合は、ガンの最大の原因は生活習慣です。

 


 

参考:やさしい「がん」の教科書 
 
末期癌克服への架け橋区切り線

 

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